カピバラの備忘録

アニメと音楽と読書など。少し自分の考えをまとめて見たい気分になりました

「月がきれい」 14話 創作

月がきれい 14話

「ねえ、茜。こないだ試合に来ていたのって彼氏?」
部活の休憩時間、同じ短距離で友だちの美咲が突然聞いてきた。

「えっ、なんで…」
「やっぱりそうか(笑)終わったあと茜ちょっといなくなったよね、偶然見ちゃったんだ。茜ってすぐ顔に出ちゃうから、隠しごとできないよね」(笑)
「もうっ」恥ずかしがりながらも少しむくれる。

「でもいいなぁ茜は、応援に来てくれるなんて。私、遠距離だからなかなか会えなくて」
「えっ、そうなの。実は私も遠距離なんだ」

小太郎くんのことを想う気持ちは変わらないけど、距離が遠くなったことで時々寂しくなる。でも美咲が同じ遠距離を続けていることを知って「私だけじゃない」と考えたら少し元気が出てきた。

クラスの友だちにも付き合っている子は何人かいる。隠すのも変だし、男子に誤解されるのも困るので小太郎くんのことは割と最初の頃に話した。
恋バナは盛り上がるけど結構恥ずかしい、でも友だちの話を聞いていると「好き」にも色々あるんだなと思う。

優しいところが好き
楽しいところが好き
音楽の趣味が合うところが好き…

去年、心咲たちに聞かれたときは「一緒にいると安心するところ」と答えた。

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小太郎くんって結構大人だなと思う時がある。
お祭りで舞を披露したり
古本屋のお兄さんと仲良かったり
やっぱり地元の大人たちと付き合いがあるからかな…
私はいつも助けてもらってばかり…

いったい小太郎くんは私のどこを好きになってくれたんだろう…
そんなことをふと考えてしまう。

 

7月のとある日曜日。
川越と市川の中間にほど近いショッピングモールに遊びに来た。
洋服や雑貨店、本屋さんにスポーツ用品店。映画を見るという選択肢もあったけど、それだと喋る時間が少なくなってしまうので今回は無し。
ふたりで色んなお店を見てまわる、それだけで楽しい時間が過ぎて行く。

フードコートで少し遅いお昼ご飯。

陸上部の友だちが同じように遠距離をしていること。夏休みの合宿のこと。
小太郎くんは学校のこと。アルバイトのこと。お囃子の練習のこと。

普段逢えないから話すことが沢山ある。この間は競技場に来てくれたけどほとんど喋れなかったから尚更。LINEはしているけどやっぱり違う。

 

そのあと飲み物を買って、外の景色が見えるベンチに座る。

「少し聞いても、いい…?」「えっとね、小太郎くんって、私のどこが好きになったの…」

「あらためて聞かれると何か…、ちょっと照れるかな、俺」(笑)
「えっと、茜ちゃんが体育祭の時、全力で走っているのを見て、すごく楽しそうでカッコよかった…。あまりにもキレイで見とれちゃったんだ…、たぶんその時からだと思う」

「でも私リレーで失敗したから、恥ずかしかったし少し落ち込んじゃった…」
「実は俺、リレー見てないんだよね」

ずっと用具室で芋のマスコットを探していたことを打ち明けた小太郎くん。
「用具室で拾った」と言ったから、単に落とし物を届けてくれたと思っていた…

「ありがとう、小太郎くん。そんな時から私のこと助けてくれてたんだね」
考えただけで嬉しくて、少し目頭が熱くなるのが自分でもわかる。

「全然大したことじゃないから。あーあっ、泣かなくていいから」(笑)
「本当にありがとう、これからもよろしくね」
「うん、こちらこそ」

「じゃあ今度は茜ちゃんの番。俺のどこが好きになったの」
そう言われて、いままで小太郎に何度も助けられたこと、そしてもっと喋りたいと思ったことを話した。

「そんなことしたかな(笑)でもいつ頃そう思ったの?」

そういえばいつ頃からだろう、もっと喋りたいと思ったのは…。
去年のことなのに…
  京都の修学旅行で雨の中、告白の返事をした時
  どうしても会いたくなって神社に行った時
  体育祭が終わってマスコットを手渡してくれた時
  ふたりで用具室から得点ボードを出した時
  勇気を出してLINEを教えた時
  緊張して休み時間に話しかけることが出来なかった時
  ファミレスで恥ずかしくて、学校では秘密にしてと言った時
  そして三年クラス替え、偶然近くにいた小太郎くんを目で追った時

「茜ちゃん?」
「うんとね…。忘れちゃった」(笑)
「えぇっ」(笑)

誤魔化すように小太郎くんのほっぺにキス。
そのまま少しだけ小太郎くんの身体にもたれて思う。
  きっと同じクラスになった時から小太郎くんと喋りたかったんだ…

初めて出会った時から決まっていた、そう思えた。
人が人を好きになるなんて、大した理由はないのかもしれない。
大切なのは私が小太郎くんのことが好きだということ。

「小太郎くん、大好き」
「俺も、大好き」
「でもたぶん私の方が好きだから」(笑)
「俺はもっと好き」(笑)

去年の夏は楽しかったな。
遊園地に花火、お囃子の稽古、風鈴…
今年はもっと楽しい夏にしよう。もっと好きって言えるように。

そんなことを考えながら一日を過ごした。

…14話 終わり

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妄想入ってます。微妙に「めぞん」も入ってます。文章を書いていると自分の考えも纏まるし、ロスも癒える。

以上「身勝手版 14話」でした。

 

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