「月がきれい」 …それぞれの告白
告白とその返事
神社境内。小太郎の告白
茜「ほんと、月きれい」小太郎「つき、あって…」 茜「えっ」
小太郎は何となく茜に自分と同じものを感じていたと思います。
小説を書いて応募はするけど、読ませたくはない小太郎。
恥ずかしいし緊張するから目立ちたくはないけど、走るのは大好きな茜。
この日、茜から会いに来てくれただけで嬉しいのに、この笑顔を見て小太郎は完全に恋に落ちました。恋に落ちたとき…、文学的表現なんて関係なくなるんですね。
この時は返事をもらえなかった小太郎ですが、京都の修学旅行で。
茜「もっと喋りたい、安曇くんと…」 小太郎「それって、返事」
茜「うん…」
中途半端な待ち合わせの約束からくる不安、そして苛立ちから小太郎にきつい言葉を返す茜。でも「わかんない、わかんないけど」と神社の境内で「なんか変なの」と思う自分の気持ちが「好き」という感情なのだと気がついた瞬間、少し恥ずかしくなったのかも。やっと聞き取れる様な小さな声で「うん」と返事をしました。
お祭りの夜。比良の告白
比良「でも、何で安曇。」「俺の方が絶対水野のことよく知っている」「ずっと、はじめから、ずっと一番好きだ!」
茜「比良は友だちだから…。大事だけど、違う」
この春、同じクラスなって知り合った小太郎より、部活で約二年半一緒だった自分の方が茜のことをよく知っている…。その気持ちはわかる。が、好きを伝えるために相手を比較するのは駄目でしょう。
茜の返事は「比良とは恋人にはなれないし、まして小太郎の代わりにもならない」と言っているわけです。
流されやすい茜にここまではっきり拒絶された比良はかなりショックだったでしょう。まわりからも告白したら茜は断らない(断れない)と思われていたわけですし。
そういえば大会後のハンバーガーショップでは茜の隣に座ってましたけど、他の男子部員がそれとなく気を遣ってくれてたのかな?
でも茜に友だちとしか思われていたことに気がつかなかった比良は、やっぱり茜のことを何も理解して無かったわけでして。とにかく残念。
氷川橋。小太郎の告白
小太郎「ちゃんと将来とか…」 茜「うん」
小太郎「小説のこととかも…」 茜「うん」
小太郎「考えて決めた…」 茜「うん」
小太郎「ずっと、一緒にいたいし…」「本気だから…」
茜はキスで返事
比良の茜への告白。嫉妬心からつらく当たってしまった茜に本気の想いを伝える小太郎。この時の茜のキスは小太郎もビックリ。
キスの後、思わず周囲をキョロキョロ(笑)
茜はこの時から本当に小太郎を誰にも取られたくないと思ったのかも。
氷川橋。千夏の告白
千夏「コタのこと、ずっと好きでした」「私じゃ駄目かな…」
小太郎「ごめん…」
場所は前述の氷川橋。茜への対応と比べ、千夏には「ごめん」の一言。茜の友だちだという以外、全く恋愛対象として見ていなかった、特に親しくもない女の子からの突然の告白。
お祭りの夜、茜への比良の告白に似ています。
比良の場合「なんで安曇?」 千夏の場合「私じゃ駄目かな…」
どちらもこれで自分に振り向いてくれる訳じゃない、答えがNOであることはわかっていた。ただ気持ちにけじめをつけたいからきた発言でしょう。
しかし何故ここでコタ呼び? 当人は親しみのつもりなのでしょうが、比良と同じく相手のことをよくわかっていないのかな。
良い子ですが、なかなか理解しがたい面を持つ千夏。でもこの真っ直ぐさが、時には茜を不安にし、時には茜の背中を押してくれる。それが茜の「好き」を強くしてくれたのでしょうね。
小説「13.70」。小太郎の告白
現実になる遠距離。不安からお互いの心も遠くなり別れの予感を感じるふたり。
現実の不安に押し潰される、小太郎との関係が悲しい結末になることを恐れていた茜を、小太郎の「大好きだ」のひと言が救いました。
そして小太郎自身も「大好きだ」と叫んだ時、救われたはずです。
なぜならこれは比良に先を越されてしまった言葉だから。
でもなぜいままで「好きだと」言えなかったのでしょう…。
単に気恥ずかしかったのかも知れません、中学生ですし
しかし「好き」と言えなかった反省からか、高校生になったふたりはLINEで「私のほうが好きだよ」「俺の方が好き」と喧嘩を始めるわけです。幸せそうに(笑)
なんだかオチがついたような(笑)
しかし比良くんの残念さを一度まとめておかなければ。全てを記憶にとどめておくために。