カピバラの備忘録

アニメと音楽と読書など。少し自分の考えをまとめて見たい気分になりました

新しい過去の創造

勝手な青春劇

勉強が出来る…
スポーツに秀でている…
バンドをやっている…
面白くて楽しい…
かっこいい… 

中高生時代の人気者ってこんな感じだったと思います。

 

www.youtube.com

勝手な青春劇 愚痴をこぼして終わり
僕らの毒は僕らだけじゃないんだから
大丈夫

勝手な青春劇 何となく楽しくて
終わりにはしない僕らだけの時間を

勝手な青春劇 - ゲスの極み乙女。 - 歌詞

アルバム「達磨林檎」の中の一曲。

10代の自分は何となくむしゃくしゃしていて、誰かまわずにシニカルな意見を吐いていました。カッコつけたわけじゃなく、あの時はそうするしかなかった。
親、教師、先輩や同級生にあるときは毒づいて、あるときは迎合して…。
誰も導いてくれる人もなく、ひとりで決めてゆく。

特別な存在だなんて思った事は一度もないけれど、年を重ねるにつれ、子どもの頃の人気者の条件なんて大人になったら大して意味のないことだと気がつく。

自分の過去を変えることなんて誰も出来やしないけど、子どもの時より大人をやっている年月の方が長くなってしまった。

沢山の出会い、そして小説、アニメ、映画、音楽に触れて子どもの頃とは違う解釈もできる様になった。そんな今の知識と感情を持ったまま、10代に戻った自分を想像する。

それは「新しい過去」を持った自分。その自分が大人になれば今とは少し違う人生を送れているのかもしれない。

「新しい過去」は「あの頃なりたかった自分」に近づくための魔法の様なもの…

人はいつでも変わることができる。そう考えたら少し元気が出てきた

 

「月がきれい」感想 …手の届きそうなフィクション

いまだに月ロスです…。いつになったら癒えるのでしょう(笑)

 

文学少年とスポーツ少女の純愛物語。普通に考えると、千夏がヒロインに合っているのではないでしょうか。たとえばこんな風に…

西尾千夏。元気いっぱい、自分の感情に正直、同じ種目の部員に負けないように自主トレも欠かさない。人を好きになれば当たって砕けることも辞さない。親友と三角関係的になっても、最後には親友のために背中を押す…。
小太郎は最初は大雑把だと思っていた千夏に引っ張られながらも、自分の踏み入れることのない世界を知る。そしてある時、元気に見える千夏だが実は内面が脆いことを小太郎は知る。それをサポートしながら一緒に未来を歩いて行く…。

こういう設定だと、外見と内面の落差が千夏という人物に深みを出します。
(決して本当の千夏に深みがないわけではありません、いまひとつ何を考えているのかわからないだけです(笑))

こちらが正統派な気がしますし、ほっといても勝手に物語りが進みそうですね。

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千夏のヒロイン像が動的とすれば、茜は静的でしょうか。

茜は大体において誰かのアクション、もしくは自分の失敗を受けるかたちで行動することが多いようです。

1話。小太郎のLINEを聞き出せず用具係の仕事をさぼらせてしまう。
  →勇気を出して自分のLINEを教える。
2話。べにっぽを探して借り物競走の準備を忘れる。
  →小太郎の機転でなんとか切り抜ける。べにっぽも見つけてもらう。
4話。修学旅行で小太郎からの中途半端な連絡もらう。
  →土井丸百貨店へ向かう。ケータイ繫がらないことなどで不機嫌。
5話。小太郎と喋れなくてフラストレーションが溜まる。
  →小太郎が古本屋で逢瀬の時間をつくる。
6話。千夏にLINEのことを言われる
  →ようやく小太郎のことを打ち明ける。
7話。故意か偶然か遊園地で比良とふたりきりになってしまう。
  →小太郎が「付き合ってんだ、俺たち」宣言する。
9話。小太郎から大会を見に行っていたことを知らされる。
  →それをきっかけに引っ越しのことを話す。
10話。茜の引っ越し、比良とのことで小太郎の不安と嫉妬に気がつかない。
  →小太郎の決意を知り、自分からキス。
12話。遠距離の不安から別れを予感。涙のキス。
  →「ずっと、大好きだ」で一緒に歩いてゆけると信じられた。

 

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自分から積極的に行動したのは下記の状況でしょうか。
3話。スマホの電池切れのため大会の結果をLINE出来ない。
  →会えるかわからないけど小太郎のいる神社に行く。
8話。お囃子の稽古を見に行きたいと言う。
  →見学しその後、氷川神社の風鈴へ。誕生日プレゼントを買う。
11話。クリスマスプレゼントのマフラーを編む。
  →その後、デート。キスのおねだり。

茜「会えたし…」(可愛い)

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茜「メリクリ」(可愛い)

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あまり自発的に動く感じではないですね。ほっといたら物語が進みそうにありません。

文字通り「いつもどうしていいか、わからない」ことが多いです(笑)
依存心も強いのかも知れません。
それに内面の弱さが外にも出やすいので千夏の様な落差を感じません。

どうも体育会系=積極的というイメージからずれている気がします。内向的スポーツ少女とでも言えば良いのでしょうか…

そんな茜ひとりでは進みそうにない物語を動かす。
それが普通ではない文学少年・小太郎です。

 

相手の気持ちも良くわからないのに「つきあって」と交際を申し込む。
修学旅行、連絡を取りたい一心で千夏のスマホを借りる。
遊園地で堂々の交際宣言。そして別行動に持ち込む。
茜と同じ高校を受験することを決める。

茜「みんなに言っとくね」(可愛い)

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その他「5話から8話までの振り返り」で少し書きましたが、小太郎はいつも茜のして欲しいことを先回りしていきます。

capibara.hatenablog.jp

なんだか小太郎も、文芸部=内向的というイメージからずれている気がします。
単に好きな人のために動く、彼女のために尽くすのではなく、自分を信じて行動する姿は「茜の想いは自分と同じはず」と主張しているかのよう、かなり大胆で行動的です。

こちらは行動派文学少年とでも言えば良いのでしょうか。

内向的スポーツ少女と行動派文学少年の物語。前述の千夏ヒロインで考えた物語と比べると、少し強引なストーリーになりそうですね。ラブコメでもかなり面白いお話ができそう。

ファミレスで小太郎と出会った時の茜は「学校では言わないで…、恥ずかしい」と言っていたのに、べにっぽが見つかると緊張が解けたのか「ホント恥ずいんだけど…やっぱ走るの好きだから」と早口でまくしたてる。

用具室で緊張の中やっとの思いで小太郎に声を掛けるけど、その後緊張が解けると小太郎の制服が汚れているのを見て躊躇無くパンパン叩く。

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内向的だけど部活仲間以外、心咲たちとも空気を読んで仲良くつきあえる。
家族との会話では「お姉ちゃん」ではなく「姉ちゃん」


ご飯を「お替わり」ではなく「おかーり」とかリラックス感半端ない。

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茜の場合は親しくない人と親しい人に対する緊張の度合い。打ち解ける前とその後のギャップ、内弁慶度にかなり萌えます(笑)
そして関係が深まり過ぎると感情に振り回され押さえられなくなる。

元気なスポーツ少女と、大人しい文学少年という記号化された組み合わせではなく、スポーツをやっている内向的な少女と、文学を愛する行動的な少年という組み合わせが、良くある物語とは少し違う印象を与えていると思います。
そして従来の物語と少し違う落差を持った主人公にしたことが、この物語が心に刺さる大きな部分かなと思いました。

「リアリティのある物語」と良く言われますが、本当に普通の日常と登場人物を描いても、当たり前過ぎて共感はできてもリアルを感じない。
リアリティのある物語とは手を伸ばせば届くかもしれない、でも手を伸ばすことができない「共感できるフィクション」の中にあるものかも知れません。
(Cパートは普通の日常に近いと思います。それが本編を際立たせているかも)


水野茜はあくまでフィクションの存在。でも昔出会ったあの子も、こんな気持ちでいたのかも知れない。

そして安曇小太郎は「あの時、手を伸ばすことができなかった自分」
これもやはりフィクションです。

心地よい、夢のような、でも手の届きそうなフィクションを描いてくれることで、「もしかしたら…」のリアリティを感じることができる。

そして中学生時代が遥か遠い過去になってしまった私が、LINEという最新ツールを手にした昔の自分を思い出す感じ…
それは「懐かしい未来」ではなく、「新しい過去」を創造してくれる。

私にとって「月がきれい」とはそんな物語。それがいつまでたっても「月ロス」を解消できない理由のひとつかもしれません。

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「徒然チルドレン」1話 告白 感想

原作を知らないのでタイトルの面白さだけで視聴

いやあ、なんだかニヤニヤしっぱなしの物語でした。
私の心の穴を埋めてくれるかな…

 

いろんなカップルの色々な「好き」描いてゆくショートショート

告白

好きな者同士のふたり。だけど「好き」と言えず空回りする女の子と、その空回りに付き合う男の子

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不真面目な彼女

ちょっと不真面目っぽい女の子が、照れ屋で真面目な男の子にストレートに「好き」と言っちゃう。

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生徒会長の悩み

不良を気取るけど根は純情な女の子。一見真面目だけど妙に手練れた生徒会長のなんだか婉曲的な「好き」。

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スピカ

先輩に日頃から好きと言っているけど、いつも茶化してしまうので本気と取られていない女の子。卒業前日の夜、ついに真面目に「好き」と言えたけど…

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ギャグなんだけど現実に無さそうで、ありそうで…

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英樹「お前の好きはもう聞き飽きた」
さつき「えーっひどいっす」
英樹「でも今夜で最後だ。出て行く前にもう一回聞きてぇ」
  「言わねえなら俺から言うぞ」
さつき「せんぱーぃ、めっちゃ好きです」(泣)
英樹「泣くな、バカ」

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先輩はちゃんと本気の「好き」だとわかっていました。

どうして最近の作家さんはこんなに泣かせるのが上手いんだろう。
どうしてこんなに心をくすぐる話を書けるんだろう。

異性に対する見栄とか、照れとか、強がりとかが一杯詰まっている。
徒然チルドレン」とはそんなお話でした。

 

最近、最終回まで見ることができるアニメの共通点として、音楽が好みであることに気がつきました。

 

 

「月がきれい」 …それぞれの告白

告白とその返事

 神社境内。小太郎の告白

茜「ほんと、月きれい」小太郎「つき、あって…」 茜「えっ」

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小太郎は何となく茜に自分と同じものを感じていたと思います。
小説を書いて応募はするけど、読ませたくはない小太郎。
恥ずかしいし緊張するから目立ちたくはないけど、走るのは大好きな茜。

この日、茜から会いに来てくれただけで嬉しいのに、この笑顔を見て小太郎は完全に恋に落ちました。恋に落ちたとき…、文学的表現なんて関係なくなるんですね。

この時は返事をもらえなかった小太郎ですが、京都の修学旅行で。

茜「もっと喋りたい、安曇くんと…」 小太郎「それって、返事」
茜「うん…」

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中途半端な待ち合わせの約束からくる不安、そして苛立ちから小太郎にきつい言葉を返す茜。でも「わかんない、わかんないけど」と神社の境内で「なんか変なの」と思う自分の気持ちが「好き」という感情なのだと気がついた瞬間、少し恥ずかしくなったのかも。やっと聞き取れる様な小さな声で「うん」と返事をしました。

お祭りの夜。比良の告白

比良「でも、何で安曇。」「俺の方が絶対水野のことよく知っている」「ずっと、はじめから、ずっと一番好きだ!」
茜「比良は友だちだから…。大事だけど、違う」

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この春、同じクラスなって知り合った小太郎より、部活で約二年半一緒だった自分の方が茜のことをよく知っている…。その気持ちはわかる。が、好きを伝えるために相手を比較するのは駄目でしょう。

茜の返事は「比良とは恋人にはなれないし、まして小太郎の代わりにもならない」と言っているわけです。
流されやすい茜にここまではっきり拒絶された比良はかなりショックだったでしょう。まわりからも告白したら茜は断らない(断れない)と思われていたわけですし。
そういえば大会後のハンバーガーショップでは茜の隣に座ってましたけど、他の男子部員がそれとなく気を遣ってくれてたのかな?

でも茜に友だちとしか思われていたことに気がつかなかった比良は、やっぱり茜のことを何も理解して無かったわけでして。とにかく残念。

氷川橋。小太郎の告白

小太郎「ちゃんと将来とか…」 茜「うん」
小太郎「小説のこととかも…」 茜「うん」
小太郎「考えて決めた…」 茜「うん」
小太郎「ずっと、一緒にいたいし…」「本気だから…」

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茜はキスで返事

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比良の茜への告白。嫉妬心からつらく当たってしまった茜に本気の想いを伝える小太郎。この時の茜のキスは小太郎もビックリ。
キスの後、思わず周囲をキョロキョロ(笑)
茜はこの時から本当に小太郎を誰にも取られたくないと思ったのかも。

 

氷川橋。千夏の告白

千夏「コタのこと、ずっと好きでした」「私じゃ駄目かな…」
小太郎「ごめん…」

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場所は前述の氷川橋。茜への対応と比べ、千夏には「ごめん」の一言。茜の友だちだという以外、全く恋愛対象として見ていなかった、特に親しくもない女の子からの突然の告白。

お祭りの夜、茜への比良の告白に似ています。
比良の場合「なんで安曇?」 千夏の場合「私じゃ駄目かな…」
どちらもこれで自分に振り向いてくれる訳じゃない、答えがNOであることはわかっていた。ただ気持ちにけじめをつけたいからきた発言でしょう。

しかし何故ここでコタ呼び? 当人は親しみのつもりなのでしょうが、比良と同じく相手のことをよくわかっていないのかな。
良い子ですが、なかなか理解しがたい面を持つ千夏。でもこの真っ直ぐさが、時には茜を不安にし、時には茜の背中を押してくれる。それが茜の「好き」を強くしてくれたのでしょうね。

小説「13.70」。小太郎の告白

現実になる遠距離。不安からお互いの心も遠くなり別れの予感を感じるふたり。

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現実の不安に押し潰される、小太郎との関係が悲しい結末になることを恐れていた茜を、小太郎の「大好きだ」のひと言が救いました。

そして小太郎自身も「大好きだ」と叫んだ時、救われたはずです。
なぜならこれは比良に先を越されてしまった言葉だから。

でもなぜいままで「好きだと」言えなかったのでしょう…。
単に気恥ずかしかったのかも知れません、中学生ですし

しかし「好き」と言えなかった反省からか、高校生になったふたりはLINEで「私のほうが好きだよ」「俺の方が好き」と喧嘩を始めるわけです。幸せそうに(笑)

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なんだかオチがついたような(笑)

しかし比良くんの残念さを一度まとめておかなければ。全てを記憶にとどめておくために。

 

 

「月がきれい」 気ままに13話

月がきれい 13話

春、新学期。
小太郎は市立高校、茜は光明高校に入学して間もなく1ヶ月が過ぎようとしていた。
部活動は当然、文芸部と陸上部。
4月はお互い新生活の忙しさで結局逢えずじまい。
少し寂しさの募るふたりだけど楽しみは夜のLINE。学校のこと、部活のこと、新しい友だちのこと…。

茜が引っ越していった日の夜、小太郎は「明日、会いたい」と茜にLINEした。
返事は「わたしも会いたい!」

翌日、小太郎は茜の住む街へ。


せっかくの日に泣いてしまったこと。引越の日、見送りに行けなかったこと。「13.70」を読んだこと、電車を追いかけて橋まで来ていたことなど…。

新しい家の整理などが残っているため、それほど長い時間一緒にいられたわけではなかった。けれど、小太郎はどうしても直接伝えたかった。

小太郎「好きだ。これからもずっと、かわらない。大好きだ」
茜「私も大好き。小太郎くんのこと」


そして4月から大型書店でアルバイトを始めた小太郎。
平日は週2回の夕方から3時間、土曜日は8時間。大変だけど本に囲まれた仕事は結構楽しめる。
そのせいでまた勉強しなくなったから母親の小言は多い。けど、小説を書いていることについては何も言わなくなった。

親戚から貰った入学祝いがあるので、交通費くらいは何とかなる小太郎だけど、
茜「あまり無理しないで。私は大丈夫だから」
小太郎「了解! 距離は少し遠いけど、いつも想っているから」
本当は毎週でも逢いに行きたい。けれど…
でも茜の気持ちに負担をかけすぎてはいけないと思い言われる通りにしていた。

そしてもうすぐ給料日。
小太郎は早速GWに行こうと思っていたのだが、茜の通う光明高校は陸上の強豪校、部活に休みはない。
仕方なく小太郎もGW中はバイトのシフトを入れることに。
店長「安曇君、助かるよ。この時期休みを入れるバイト君が多くてさ」
小太郎「いやぁ、そんな…。別に予定ないんで」

その夜のLINE。
茜「なかなか会えなくて、ごめんね」
小太郎「いいよ、いいよ」「とりあえずバイトしたり、小説書いてる」
茜「ありがとう」
小太郎「部活ってどう、慣れた、きつい?」
茜「うん、やっぱり高校はちがう感じ」
小太郎「そっか、無理しないでね」
茜「ありがとう」

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もうすぐ逢える。そう思うと嬉しくてなかなか寝付けないふたり。

そしてGW明け、最初の日曜日。
午前9時、茜の住む街の駅で待ち合わせ。
ここまで来るのに約2時間掛かる小太郎のために都内で待ち合わせしようと言った茜。
でも茜の住む街をもっと良く見たいと言う小太郎の希望を優先した。

待ちきれず約束の時間に20分早く着いた茜。するとすでに小太郎が待っていた。

茜「おはよう」
小太郎「おはよう」
茜「小太郎くん、待った?」
小太郎「いや、なんか、約束より早く来ちゃった」
茜「私も…。じっとしていられなくて…」
小太郎「うん、俺も」
茜「なんか…久しぶりだね」
小太郎「そうだね」
笑顔のふたり。

茜「小太郎くん、背伸びた?」
小太郎「少しだけ…。茜ちゃんも雰囲気変わったかも…」
茜「そうかな」
小太郎「うん、きれいになった、と、思う…」
茜「ありがとう…」
赤くなるふたり。

近くの公園を歩く。
LINEや電話はしたけど、直接話すのは約1ヶ月半ぶり。話し始めると、いろんなことを思い出して気持ちが高揚してくる。

その後、ファーストフード店でお昼。
茜「眠くない?」
小太郎「あぁ、全然平気」「…ウソ。結構眠い(笑)」
茜「やっぱり(笑)」
小太郎「バイトが結構忙しくてさ、土曜日は夜までだし」「あと眠れなかった」
茜「私も」

「そういえば、千夏は元気?」少し不安そうに尋ねる茜
小太郎「元気そうだよ。クラスが違うから、話をすることは少ないけど」
茜「そっか…、時々LINEはくるけど」
小太郎「全然、心配しなくて大丈夫だから」
「うん」と言って、ようやく明るい表情を見せる茜

小太郎「練習はどう?」
茜「みんな凄くて、もうついて行くのがやっと。でも頑張る、好きだから」
小太郎「大会って今月末だよね。見に行こっかな…」
茜「…うん。待ってる…」

茜のことだからダメと言うと思っていた小太郎は少し驚いた表情で
小太郎「えっ、いいの。やった…」

茜「でも、お父さんとお母さんも来るから…、見つからないようにしてね」
少し恥ずかしそうに小太郎にお願いする。

話は尽きない、もっとこのままでいたい。だけど…
小太郎は茜の明日の練習のことを気遣い
茜は小太郎の帰りの電車の時間を気遣い
駅へ向かう小太郎と茜のふたり。

小太郎「じゃ再来週、応援に行くから。競技場で」
茜「うん、待ってる。私、頑張るから」

電車から手を振る小太郎。
名残惜しそうに見送る茜。でも淋しさはない。
大好き。そしていつでも逢える。それがふたりの気持ちだった。

その頃、茜の家。晩ご飯の支度をするお母さんと彩音
彩音「茜、朝早くから出かけたけど、彼氏とデートなんだって?」
お母さん「そうみたい、彼氏ってどんな子か知ってる?」
彩音「ほら、去年の春、ファミレスで挨拶した同級生がいたじゃない」
お母さん「へえ〜、あの子。なんかおとなしい感じの男の子だったわよね」
彩音「それが、お母さん。実は結構ねぇ…」


お母さんは話を聞いてびっくりした様子だけど、なんだかニヤニヤ。
詳しく話を聞きたいけど、ままならない微妙な顔のお父さんでした。

…13話 終わり

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月がきれい」ロスになってます(笑)
小太郎は絶対に引越の翌日、茜に逢いにいってるでしょう。
だって、いつも茜の望む回答を出し続けてきた小太郎だから。
そして荒ぶる心を持っているから、行動しないわけはない(笑)

久しぶりに逢って、少しずつ大人になっていくふたり。
高校生最初の遠距離デートはこんな感じではないでしょうか。

ロス中の気持ちを忘れないための「身勝手版 13話」でした。

「月がきれい」感想 …思春期の終わり

最終話まで見終わってあらためて振り返ると密度の濃い物語でした。
言葉で多くを語らなかったりするので、ちょっとした表情やしぐさ、脇役の言葉からふたりの気持ちの揺れ動きを推測する。あとLINEのやり取りで感情表現をしたり。


とにかく情報量が多くて、見返すたびに発見があるので、しばらく思いついたことを書き散らかしてみます。

この物語の骨子は思春期の小太郎と茜が、知り合ってからの一年での成長過程を描いたと思います。ふたりは中学三年生の春からみるとずいぶん変わりました。

変わる小太郎

小説を書いている。友人や身近な人は知っているが、読まれるのは恥ずかしい。
でもいつか新人賞を取って自分の作品を発表したい。

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思春期によくある感情でしょう…
「誰にも自分のことを言えない、それでも自分をわかって欲しい」

「水野さんはそのままでいい、と思う」
小太郎の言葉は茜の心に届き安心させました。そして小太郎は少しずつ変わります。

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茜と出会って恋に落ちたこと、茜に自分から「付きあって」と言ったこと…

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自分の気持ちが相手に伝わる、それはある時は嬉しくて、ある時は嫉妬に苛まれ、ある時は勉強も頑張ることができる。

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小説の才能に悩む小太郎でしたが、茜と付き合ううちに人を動かすのは純文学とかラノベとか関係ない。文学賞を受賞することでもない。
自分の気持ちを伝えることだと気がつきました。

小太郎と茜のことを書いた小説「13.70」
それは賞が目的ではなく、初めて人に読んで貰うために書いた小説です。20170701171428


最終章に、茜にいままで一度も伝えていなかった言葉を書きました。
いま小太郎はその大切な言葉を直接伝えるために走ります。 20170701174333


それは祭りの夜、比良に言われてしまった言葉…
本当は自分が茜に一番最初に言いたかった…


だからLINEでも小説の言葉でもなく、小太郎は茜に直接伝えたかった。
「大好きだ」と…20170701175029


叫んだ時、小太郎の気持ちは外の世界に開かれたのでしょう。
これからも「大好きだ」と伝えていきたい。茜と同じ未来を歩むために…

 

変わる茜

緊張しやすい、流されやすい、自己肯定感も低い。
友だちとは普通に喋れるけれど、初対面や親しくない人とはいつも手探り…


体育祭の後「水野さんは、そのままでいいと思う」と言ってくれた小太郎。
そのひと言が茜の気持ちを楽にしました。
小太郎の好きなところを聞かれると「目立たないけど一緒にいると安心する」と答えます。

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そして小太郎と深く繫がるほど茜の感情の起伏が大きくなります。
遊園地、風鈴、お祭り… 沢山の喜び。
誤解、すれ違い、遠距離… 沢山の不安。

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いつも小太郎ばかりに無理をさせている…
自分がどうしていいかわからない…
小太郎のために何もできない自分への哀しみ…
涙と、茜からのキスの多さは不安定な気持ちの現れでしょう。
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でも「どうしたらいいかわからない」哀しみは、茜が自身を変えたいという気持ちの裏返しです。小太郎のために…

「13.70」を読み終わり、小太郎となら一緒に未来を歩んでいける思いました。
どうしていいかわからず泣いていた茜が小太郎となら「ずっと一緒に歩いて行けると」信じられました…


それは小太郎の「大好きだ」が届いたから…

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ふたりの願い

氷川神社に書いたふたりの願い事。「ずっと一緒にいられますように」
光明受験を決めた夜の小太郎の言葉。「ずっと一緒にいたいし」

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そしてこれからは「ずっと一緒にいるために」少しずつ変わってゆくのでしょう。
自分の好きなことを頑張り、相手のことを思いやりながら。

平成29年(2017年)の小太郎と茜

光明高校受験対策問題集から、ふたりは28年入学なので現在高校二年生…

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 EDのLINEで「ラブラブ喧嘩」が冬服です。
時系列からして、もしかしたら丁度いま、こんな感じでしょうか(笑)20170630184537

ラブラブ喧嘩

どんな喧嘩かと思ったら… ただの惚気でした(笑)

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ふたつの「べにっぽ」と「つづく」

新OP場面も最終話が終わって見ると溜息をついてしまいます。

ふたつの「べにっぽ」は最終話のラストを。
小説「13.70」の下に写る「つづく」の文字はEDのLINEネタを。
小太郎と茜の「それから」の物語をこれだけで暗示するなんて…

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「月がきれい」12話 それから その3 感想

「好きな人が、自分を好きになってくれるなんて…」
「奇跡だと思った…」

素晴らしい最終話でした。
きっと、この言葉のために全てが存在したのでしょう。

これを超える話はないと思えた決意の10話「斜陽」
付きバレして、ふたりが安心感に包まれた7話「惜しみなく愛は奪う」
恋に落ちる瞬間と告白を描いた3話「月に吠える」


これらを遥か遠くに追いやってしまった感のある最終話「それから」でした。

 

茜の乗った電車を見送る小太郎。
新しい街へ向かう茜。


ふたりの表情は遠距離になる寂しさと、これからも決して気持ちが変わることのないそれぞれの想いが伝わってくるようです。

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小太郎と千夏のこと

茜は小太郎に千夏に告白されたことを「何で…。言ってくれなかったの…」と責めるように言ってしまいました。

遠距離… 小太郎の光明受験… そして受験失敗… バイトして始発で逢いにくるという小太郎… そしてお姉ちゃんのひと言…
その言葉を否定したいけど、小太郎君にこれ以上の無理をさせてたら…

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千夏が小太郎のことが好き。それは以前から知ってたことでした。
でも小太郎と遠距離になる茜の心は複雑だったと思います。

以前なら小太郎を取られたくない気持ちが勝っていたでしょう。でもいまは…


小太郎に自分のことで無理ばかりさせるのはつらい…
小太郎は千夏と付き合ったほうが幸せなんじゃないか…
千夏は親友だし良い娘だし…
小太郎にふさわしいのは千夏なんじゃないか…

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いつも小太郎は自分から行動して変えてゆこうとする。
緊張しやすい、自己肯定感が低い茜は自分が何もできないことに悩み、千夏の小太郎への告白をきっかけにこんなことを考えていたのかもしれません。


千夏の気持ち

千夏はおそらく小太郎に対する想いにケジメを付けることができたのでしょう。
「私、告白していい? ちゃんと諦めたいから」と茜に言った夏から長い間その気持ちを秘めていたわけです。

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とにかく何をするにも全力の千夏。不安に流される茜とは対照的な性格です。
そして今度は、茜と小太郎のために尽くします。

投稿小説のことを何故知ったのか。ろまん君から聞いたというのが一番可能性がありそう。千夏本人は小説読まなそうだし…

小説「13.70」を見つけたこと。それは奇跡のような偶然だったかもしれません、しかし今にも折れそうな茜の心を支えてくれた偶然でした。

 

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茜は千夏に「小太郎くんに会いたい」と言ったのでしょうか。
小太郎の話はしなくとも「13.70」を読んだ茜の気持ちが千夏にはわかります。
もちろんそれを書いた小太郎の気持ちも。

塾で「安曇君もガンバレ」と背中を押した千夏。ふたりのために再び背中を押してくれたLINEでした。

走る

 茜に大切なことを伝えるために走る小太郎

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かっこ悪い走り方…
でも茜に大切なことを伝えるために走る小太郎の姿はとてもきれいでした。
桜の花びらが三年の始業式のことを思い出させてくれます。

電車に追いついた小太郎は、初めて茜に本当に伝えたい言葉を叫びました。

「13.70」

しかし「13.70」って明らかに茜へのラブレターですよね(笑)
10話のプロポーズは茜だけに向けたものでしたけど、このラブレターは世界に向けてネットで発表しちゃったわけですよね(笑)
恥ずかしいから小説は古本屋のお兄さんにしか見せたことなかったのに…

いやぁ、茜が喜んでくれれば何も言うことはありません(笑)

心咲、節子、美羽

「みんな、ずっ友だから」と涙声の美羽。心咲は小太郎を呼んで茜とツーショットを撮ってあげる。小太郎と別れた後、茜の表情は不安げです…

最後まで優しくイジる姿が良いですね。 永原、金子、稲葉はどうなった。

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ろまん君と小笠原

相変わらずの関係。ろまん君が小説投稿サイトのことを小太郎に教えてくれます。
ところで、ろまん君は本当に「読モ」になるの… そういえば涼子先生は?
 

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小太郎

ずっと袋に入ったままだった「小林さんちの台所事情」が本棚に並んでいます。
もう純文学とかラノベとか、こだわりがなくなったのでしょう。
…大切なのは自分の気持ちを人に伝えるために書くこと。


ろまん君や小笠原君も「13.70」を読んでくれたのでしょうか

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古本屋のお兄さん

どんな経験でも小説のネタになる。小太郎のやっていることを否定することなく他の方法を教えてくれたり、優しくて最後まで頼りになる人でした。
1話で小太郎に「いろんな本、読んだらいいよ」とも言ってくれました。

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クールなそぶりは涙もろさを見せないため。

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比良君


最後までさわやかスポーツマン。「また競技場で」

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茜のお父さんとお母さん


せっかく友だちが来たのだから電車で行きなさいと薦めます。
ナイスアシスト!

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お姉ちゃん

超現実的発言が多いのも、妹の悲しむ姿を見たくないから。
やさしいお姉ちゃんです。
引越の時いなかったのは、千葉に先乗りしていたためでしょうか…
見返したら引越の時、声がしてました。「お母さん、業者さん呼んでるよ」
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